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癒合葉という不思議

植物を育てていると、ときどき「どうしてこうなったの?」と驚くような成長の瞬間に出会うことがあります。今回 Begonia 'Wine Cup'で観察されたのは、まさにそんな場面でした。



写真をご覧ください。2枚の葉が根元でくっつき、先端部分だけが分かれて展開しているのが分かります。見た目は1枚の葉のようでありながら、よく観察すると左右にそれぞれの葉柄が存在し、あたかも双子の葉が途中まで一体になったようなユニークな姿です。

このBegonia 'Wine Cup'では3カ所でこのような現象が確認できました。


■これは何が起きているのか ——「癒合」という現象


このように本来は別々に生じるはずの2枚の葉が、芽の段階でくっついた状態で展開することは、園芸界隈では便宜的に「葉の癒合」「癒合葉」などと呼ばれることがあります。


ただしこれは正式な植物学用語ではありません。植物形態学・発生学の観点では、より正確には葉原基(ようげんき)の先天的付着(congenital fusion of leaf primordia)と説明される現象です。

つまり、芽の内部で葉になる“設計図(葉原基)”が2つ発生したにもかかわらず、境界が完全に分離せず、基部〜葉柄付近が一体化した状態で成長したということです。



■癒合が起こるメカニズム


植物の新芽(分裂組織)では、オーキシン(植物ホルモン)濃度の分布が、葉の数・向き・左右対称性・葉原基の配置を決めています。

癒合葉が形成される背景として、植物学では次のような要因が指摘されています。


●葉原基配置の乱れ

・成長点におけるオーキシン濃度勾配がわずかに乱れる→本来別々に発生するはずの葉原基が物理的に近すぎる位置で誘導される


●細胞境界の認識エラー

・葉原基の表皮細胞同士が“別個の葉”として区切られず融合する→基部が一枚の葉のように連続的な表皮で覆われる


●遺伝的・環境的な影響

どの要因かひとつに断定はできないものの、研究的には・遺伝的な形質(特に園芸品種で起こりやすい)・栄養状態の急激な変化・温度や照度の揺らぎ・芽のごく初期の機械的ストレスといった複数の要素が絡み合うと観察されやすいとされています。

つまり、“異常”というよりも、植物の成長がもつ可塑性(ゆらぎ)によって偶然生じた枝変わりのような自然な現象という解釈が適切です。


 

■おわりに


Begonia 'Wine Cup'が見せてくれた“癒合葉”。

今回私は癒合葉を観察したのははじめてですが、ベテランの方によると、長年栽培をしていると幾度か出会う現象だそうで、

Begonia listadaや、その交配種、Begonia fangiiなどで何度か出会っているそうです。

品種によって出易いとかあるのかもしれませんね。


 

また新しい葉が展開するたびに、「次はどんな表情を見せてくれるだろう?」とワクワクしながら観察できるのも、ベゴニア栽培の醍醐味です。

もし皆さんの株でも似た現象が見られたら、ぜひ写真に撮って記録してみてください。その一枚は、植物の“成長という奇跡の途中経過”を切り取った、とても価値のある資料になるはずです。

 

 
 
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