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1888年作出のベゴニアを探せ!

ある日インスタのDMにフランス人のNathan Orlof という方からメッセージが来ました。

 

彼はフランス国立ベゴニアコレクションを担当している植物園芸家で、AFABEGO(フランスベゴニア協会)の会員でもあるそう。またAFABEGOの会報誌で記事の執筆も担当されているとか。なんだか凄い人のようです。


Parc de la Tête d'Orの中にあるGrandes serres Nathan Orlof 氏 撮影
Parc de la Tête d'Orの中にあるGrandes serres Nathan Orlof 氏 撮影

 

仕事場は、Parc de la Tête d'Orの中にあるGrandes serresという大温室。1880年に建造され、1883年に公開された歴史ある大温室。こんなところで仕事をしているなんて、素晴らしすぎますね。

 

一般公開されていない大温室のナショナルコレクション
一般公開されていない大温室のナショナルコレクション

今回私に接触してきたのは、1888年にフランスで作出されたレックスベゴニアのBegonia ‘Adrien Schmitt’ を探しているということで、日本での情報を集めて欲しいとのことでした。

 

このB. ‘Adrien Schmitt’ は名品だということで19世紀から20世紀にかけて、世界中に広まったとか。しかし現在フランスにある同種は、1888年に作出されたものと葉の特徴が違ってしまっているのだそうです。そこで1888年に作出されたものに近い同種の情報を世界中から集めているそうで、その派生種?のB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ のことも同様に調べているそうです。


 

このB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ はほぼ日本でしか栽培記録がなく、フランス国内ではBegonia Club の近藤氏が作出したという情報がまことしやかに伝わっているのだそうです。

 

ちなみにシュミットのスペルが違うのは、アメリカで記載されたときに間違って記載されたものが今も伝わっていると言ってました。

作出者のシュミットさんは、Etienne Théodore Schmitt という方で、日本で検索しても情報にアクセス出来ませんが、他にもいろいろなベゴニアを作出された方だそうです。

 

 

ところで私はベゴニア歴4年の若輩者なので、このベゴニアはまったく聞いたこともないのです。Googleで検索するとBegonia Club に2つともあることが分かりました。翌日早速電話で問い合わせてみましたが、今はもうないそうです。残念。

それとB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ が近藤氏の作出だという噂は、明確に否定されていました。

 


B. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ ジラゴンノ・ナーセリー
B. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ ジラゴンノ・ナーセリー




これは自分だけでは解決出来そうもないと考え、日本ベゴニア協会の理事長に相談することにしました。理事長は早速結果を出してくれて、B. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ の現物を探し当ててくれました。


場所は、山梨県は鳴沢村にあるジラゴンノ・ナーセリーさん。

こちらで種の保存をされていたそうです。



 






また過去の書籍に2つほど掲載されている画像を同じく理事長からいただきました。

どちらもB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ですが、1974年発刊「ベゴニア」御園勇著。もう一つは1981年発刊「原色ベゴニア写真集」日本ベゴニア協会著


 


Googleの検索で過去にB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ があったという情報を元に兵庫県立フラワーセンターへ問い合わせてみると廣瀬さんが対応してくださり、今も存在することが確認できました。 



また関西支部のYさんにも相談してみると姫路市にある手柄山温室植物園で撮影したB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’ の画像を送ってくれました。このベゴニアは姫路ベゴニア同好会の会員の方が栽培しているものだそうです。枝ぶりも良く、花もたくさん咲いていて見事ですね。

 


一見順調に情報が集まっているように感じるけれど、Shinilart の情報だけで、一向にB. ‘Adrien Schmitt’ が見つからないのです。なぜだ?

 

日本ベゴニア協会が発行している「ベゴニア チェックリスト 2001」にはどちらのベゴニアも掲載されていて、日本への導入もされていることは確実。しかしB. ‘Adrien Schmitt’ の情報は得られないのです。やはりレックスであることと、とても古い品種なので維持されていないんですかね?

 

ここでNathan Orlof さんから1888年に作出された当時の葉のイラストと最初期に撮影されたという画像が送られてきました。


 

そしてNathanさんが言うには、B. ‘Adrien Schmitt’ よりもB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’の方が1888年のものに特徴が近いと感じるそう。

 

いまフランスの植物園にあるB. ‘Adrien Schmitt’は、葉裂が非常に深い。

これよりは確かにB. ‘Shinilart Adrien Schmidt’のほうが葉裂が浅いですね。


B. ‘Adrien Schmitt’の謎は深まるばかり。

Nathanさんの見解では「一部の栽培農家が、いつからか種子で増やし、元の遺伝子を失ってしまったのではないでしょうか。だから、こんなにばらつきがあるのだと思います。」

この見解に私なりの推測を加えると、セルフでの実生で増やした苗の中から、より特徴的な葉裂の深いものを選抜し増やしていったのではないか?

それと今のところ日本での存在を確認できていないことも気になる。


一方B. ‘Shinilart Adrien Schmidt’の謎は、なぜ日本にしかないのか?

Shinilartの意味は?AIに聞いてもわからない。

いつ、誰が、どこから日本に入れたものなのか?

これについては、まったく手掛かりすらないのです。推測すらできません。

 

その後もいくつかの植物園へ問い合わせてみたものの、どちらのベゴニアも持っていないという返事をいただくばかり。あっという間に暗礁に乗り上げてしまいました。

 

やはり137年前に作出されたレックスベゴニアを探し出すことは容易ではないですね。

 

これにて一度調査の手は止めますが、この記事を読んでくれた人の中で私が持っている。もしくはどこどこで見た!という情報があればぜひお知らせください。

 

Grandes serres Nathan Orlof 氏 撮影
Grandes serres Nathan Orlof 氏 撮影

また今回の調査では様々な方や植物園にご協力をいただきました。

お忙しい中、誠にありがとうございました。

 

そしてここ10日ほどNathanさんと様々なやりとりをして、知り合えたことにも感謝しています。Nathanさんは集めた情報を元にそのうちAFABEGOの会報誌に記事を掲載する予定だそうです。

またその記事も情報としてこちらにも掲載出来ることを願っています。

 
 
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